最近、こんな患者さんが多く来院されています。
- 少し前から咳が出ていたが、だんだんひどくなってきた。
- 風邪と言われて様子を見ていたけれど、一向によくならない。
- 咳がひどくて吐いてしまうこともある。
- 熱も少し出た。
こんな症状に思い当たるところがある方、
実はマイコプラズマ感染症にかかっているのかもしれません。
マイコプラズマはすごく小さい細菌で、
一般的な細菌にある「細胞壁」がないのが特徴です。
一口にマイコプラズマと言っても、
その中にはさらに色々な種類があるのですが、
流行により特に問題になりやすいのは
「マイコプラズマ・ニューモニエ」です。
マイコプラズマはヒトからヒトに感染します。
感染経路は飛沫感染とされていますので、
普通の風邪と同じようなうつり方をします。
つまり、鼻水や唾液に含まれているマイコプラズマが
何らかの経路で他の人の口に入った場合に、
うつる可能性があるのです。
マイコプラズマ感染症は、実に色々な症状をきたします。
「咳」を始めとした「呼吸器系の症状」は
マイコプラズマ患者さんによくみられる症状です。
熱は出ることもありますし、さほど高くならないこともあります。
その他、皮膚や中枢神経系の症状を起こすこともあります。
病院に勤務しているときは、
マイコプラズマ患者さんが
さまざまな症状をきたすのを経験しました。
その時に「マイコプラズマの症状は実に多様だ」
という印象をもったことをよく覚えています。
これまでは、マイコプラズマ感染症の診断はなかなか難しいものでした。
実際に現場で使われていた検査は大まかに分けて2種類あり、
喉の奥を綿棒でこすってとる検査と、血液検査がありました。
それぞれの検査の特徴を表にまとめてみます。
方法 | 時間 | 信頼性 | 薬剤耐性 | 検査のつらさ |
---|---|---|---|---|
綿棒 | 15分 | 低い | わからない | ややつらい |
血液 | 数日 | まずまず | わからない | つらい |
現在、診療所や病院の外来で行われているマイコプラズマの検査は
上の段の「喉を綿棒でこする」タイプがほとんどかと思いますが、
このタイプの検査はとにかく信頼性が低いのが問題でした。
本当にマイコプラズマにかかっていたとしても、
なかなか検査で陽性(プラス)にならない、
というのが最大の問題です。
ですので、たとえ結果が陰性(マイナス)と出ていても
その結果を全面的に信用することができなかったのです。
かといって、血液検査では
結果が判明するまでに時間がかかりすぎ、
目の前で困っている患者さんに対して
有効な治療ができないなど、
使い勝手は必ずしも良くはありませんでした。
しかし、2018年に新たな検査機器が登場しました。
その特徴を先ほどの表に付け加えてみます。
方法 | 時間 | 信頼性 | 薬剤耐性 | 検査のつらさ |
---|---|---|---|---|
綿棒 | 15分 | 低い | わからない | ややつらい |
血液 | 数日 | まずまず | わからない | つらい |
綿棒 | 45分 | 高い | わかる | ややつらい |
結果判明までの時間こそ少し長くなっていますが、
信頼性は高く、検査もそこまでつらくはありません。
加えて、これまでの方法ではわからなかった
「薬剤耐性」までも調べられるようになっています。
「薬剤耐性」のあるなしによって、
治療方針が大きく変わることがあるのですが、
マイコプラズマ感染症の治療については、
別の記事で改めてご説明します。
ここまで短時間で信頼性の高い結果が得られるのは、
クリニックで働く医師にとっては非常に助かることです。
すこやかこどもクリニック浮間でも、この検査機器を導入しています。
他の医療機関で「マイコプラズマではなさそうだ」と言われた方でも、
最初に述べた症状に当てはまることがあって、
やはり怪しいのではないか、と思われる場合は
一度ご相談いただければと思います。