すこやかこどもクリニック浮間

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すこやかこどもコラム

よくある質問

「新型コロナかどうか」よりも大切なこと

こんにちは。
すこやかこどもクリニック浮間 院長の金井慎一です。

重要なのは「新型コロナかどうか」ではなく「重症かどうか」

熱がある、咳が出る、鼻水が出る、のどが痛いなどの
いわゆる「かぜ症状」がみられたとき、
その原因が新型コロナウイルスかどうかは
実はあまり重要ではありません。

かぜ症状を引き起こしているのが
(旧型コロナウイルスを含む)普通の「かぜ」ウイルスであっても、
インフルエンザウイルスであっても、
今回の新型コロナウイルスであっても、
重要なのは症状が重くなっていないかどうか、
すなわち重症かどうか、です。
原因が重要なのではありません。

その理由は2つあります。

ほとんどのケースは軽いかぜ症状にとどまります

1つ目の理由は、
原因が何であっても、
そのほとんどは発熱・咳・鼻汁・咽頭痛などの
軽い症状が出るだけで、
重症化するケースはほとんどないということです。

ここでいう「重症」とは単に熱が高いということとは違います。
普通のかぜでもインフルエンザでも
40℃近い熱が出ることはよくあることです。
熱の高い低いが重症度にそのまま結びつくわけではありません。

医学的にいう「重症」とは、
輸液や酸素投与・人工呼吸など、
医学的なサポートがないと生活を送ることが困難な状態を指します。

これまでの世界中からの報告をみる限り、
今回の新型コロナウイルス感染症でも、
かかってしまった人全てがバタバタと肺炎で倒れているような状況ではありません。
ほとんどの人は軽い「かぜ症状」のみで治っていくのです。

原因がなんであれ、
症状が「かぜ」にとどまっている状況であれば、
それは「かぜ」として扱うことが妥当なのです。

もちろん原因が何であれ、
他の人にうつしてしまう病気であることに何ら変わりはありませんので、
マスクをして飛沫が飛び散らないようにしたり、
こまめに手洗いをしたり、
家庭内で使用するタオルを分けたり、
他の人との接触や外出をできるだけ避けたりといった
対応が必要になります。

もう一度言いますが、これらの対応は
新型コロナウイルス感染症だからこそ行う、というものではありません。
かぜでもインフルエンザでも当然行わなければならないことです。

特別な治療法はない

理由の2つ目は、
特別な治療法がないことです。

先ほども書きましたが、
普通の風邪でもインフルエンザでも
新型コロナウイルス感染症であっても
基本的には何もしなくても自然に治っていく病気です。

治療薬がない、と聞くと
すごく不安に思われる方もいらっしゃるとは思いますが、
治療薬がないという状況は
何も新型コロナウイルス感染症に限ったことではありません。

「治療薬」をどう定義するかというのも
難しい問題ではありますが、
仮にそれを
・使えばすぐに治る
・使わなければ治らない
ものであるとするのなら、
かぜにもインフルエンザにも「治療薬」は存在しません。

抗インフルエンザ薬は全員が必ず使うべき薬、ではありません

インフルエンザにはタミフルやリレンザがあるじゃないか!
というご意見もあるかもしれませんが、
実はそれらの「抗インフルエンザ薬」も
「使わなければ治らない、使えばあっという間に治る」
というものではありません。
抗インフルエンザ薬の効果は、ざっくりいうと
「熱などの症状が出る期間を1日ぐらい短くする」
程度のものです。
嘔吐や下痢などの副作用で余計にしんどくなることもありえますので、
少なくとも全員に一律に使用した方がいいとは言えないのです。

「かぜ薬」はかぜを治す薬ではありません

「かぜ薬」も同様です。
「かぜ薬」は「かぜを治す薬」ではありません。
「かぜ薬」は「かぜの症状を緩和する薬」です。
かぜ薬を飲んだからといって
「あっという間に症状がなくなり、人にうつさなくなる」
わけでは決してありません。
加えて、かぜの予防や重症化を防ぐ効果もありません。
あくまでもご本人の自覚的なつらさを和らげ、
かぜが自然に治るまで、少しでも快適に過ごせるようにするためのものです。
ですので、かぜを引いた本人が特段つらさを自覚していないのであれば、
解熱薬を含むかぜ薬の出番はほとんどないのです。

副作用の問題の方が大きくなることも

抗HIV薬や抗インフルエンザ薬、吸入ステロイド薬を
新型コロナウイルス感染症の患者さんに投与して、
かつ効果があった、というような報告もいくつかなされていますが、
あれも患者さん全員に一律に使用すればよいというものではありません。
ああいった患者さんに(半ば実験的に)薬の投与が行われるのは、
その患者さんの状態的に「後がない」からです。
呼吸障害が強すぎて、このままでは命の危険がある、
というような状況であれば、多少の副作用が出たとしても
救命につながりうる治療を試すことに合理性はありますが、
症状がそこまでひどくない方に
ある程度副作用が出ることがわかっている薬を
バンバン出すわけにはいきません。

元々何もしなくても治っていく見込みが高い病気なのですから、
「治療薬」を投与するメリットはとてもとても小さいのです。
むしろ副作用によるデメリットの方が
遥かに大きくなる可能性が非常に高いです。

かぜであっても、インフルエンザであっても、
新型コロナウイルス感染症であっても、
症状が軽症である限りは、
無理をせず、食事と睡眠をしっかりとって、
自宅でゆっくり休むことが
個人レベルでみても社会レベルでみても
ベストな対応なのです。

重症化のサインには要注意

ただし、
・苦しそうな呼吸をしている
・食事や水分がほとんど摂れない
・おしっこの量が減ってきた
・意識の状態や反応がおかしい
などがあれば、それは重症化のサインです。
新型コロナウイルス感染症に限らず、
かぜやインフルエンザでも重症になってしまう可能性は常にありますので、
新型コロナかどうかのみにとらわれるのではなく、
重症化のサインがみられたら、
できるだけ早く医療機関を受診してください。

(もし、新型コロナウイルス感染症であることがはっきりしている方と
2週間以内に接触したことがある場合は、
受診の前に必ず医療機関もしくは帰国者・接触者相談センターに
電話で相談をしてください)

新型コロナかもしれなくても

いかがでしょうか?
発熱・咳・鼻汁・咽頭痛などがみられたとき、
「新型コロナウイルス感染症だったらどうしよう」と
不安に思う気持ちはよくわかりますが、
これまでに得られているデータから考えて、
「まあ新型コロナかもしれないけど、やることはそんなに変わらないんだな」
というように考え方を切り替えることは
やはり難しいことでしょうか?

熱や咳があるからといって、
何が何でも4日間は自宅で様子を見なければならない
というようなことはありません。
「つらそう」「普段と様子が違う」「心配だ」ということがあれば、
これまで通りクリニックを受診していただいて大丈夫です。

また、何か疑問に思われることがあれば
いつでも遠慮なくお尋ねください。
クリニックの役割はそこにあると考えています。

みなさんが日々の生活をすこやかに送れますように。